運転での医療機関の役割
運転再開支援や運転継続支援において、医療機関が最も貢献できることは何かと問われると、運転適性検査を受けさせることであるそうです。
運転再開を希望する患者から相談を受けた場合の医療機関の役割について、間違った認識が広まっていますので、改めてご説明します。
患者からの相談があった場合の医療機関ができる最初の助言は1点のみ。「免許センターへ電話をして相談してください」です。なぜなら、診断書提出の必要性についての決定権は免許センターにあり、医療機関にはありません。
(日本身障運転支援機構ブログより)
医療職として運転に支障を来すおそれのある疾病を患ったものに対して適切に助言するとともに、適切な機関への紹介を促す必要がある。現行の日本の法律では、医療機関が疾患にかかった者の運転可否の最終決定をするわけではない。疾病を患い運転に不安を抱えているものに対しては各都道府県の公安委員会が適性相談を随時受け付けており、最終的には公安委員会が医師の診断を基に適性検査の上で運転の可否を判断する。そして、適性検査で合格した者が法的に自動車等の運転を許可される。
(脳損傷後の患者における運転評価後の運転適性検査受検に関する後ろ向き調査)
運転再開者の約25%が自己判断で再開していることを明らかにしている。
運転支援を行った患者のその後の適性検査の受検の有無を後方視的に調査し、適性検査に行くように勧めたにもかかわらず、その必要性を十分に理解しなかったために適性検査を受検せずに運転を再開していたものが39名中3名いたことを明らかにした。これらは医療機関が支援したにもかかわらず、推奨される手続きを踏まずに運転を再開したという問題を示している。
(脳損傷後の患者における運転評価後の運転適性検査受検に関する後ろ向き調査)
病気や怪我を負った後に臨時適応検査を受けなければいけないことを一般の方のほとんどは知らないのです。また、ごく一部であるが、運転免許停止または取り消しを恐れて虚偽報告をしてしまう人もいる。
医療機関に所属する職員、特に作業療法士はクライアントに対して臨時適応検査を促す役割として期待されているのです。
一連の運転評価システムおよび運転に関する講義は脳損傷後の運転適性検査受検に有用であることが示唆される。医療機関の助言を受けていないもの、あるいは助言を受けていてもそれを無視して運転を再開するものがいる可能性もある。
講義で書類を用いた適性検査の詳細な説明は患者や家族の理解を深める可能性があり、結果として患者が適性検査を受検することに有用であると推察できる。
自動車運転の知識を特別に教育された作業療法士からの道路交通法や適性検査などの説明により、運転に伴う責任と事故による不利益を改めて認識させることで対象者の態度が変容した可能性がある。
(脳損傷後の患者における運転評価後の運転適性検査受検に関する後ろ向き調査)
運転再開について正しい手順で再開をしなければ、保険がつかなかったり、大事故につながってしまう可能性を考えれば、作業療法士が適切な知識を持っておくことは重要であります。
「引用文献」
澤田辰徳,藤田佳男,小川真寛,渋谷正直:脳損傷後の患者における運転評価後の運転適性検査受検に関する後ろ向き調査.日本交通科学学会誌.第15巻.第2号
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