作業療法と自動車運転
作業療法って何?
私は作業療法士という仕事をしているのですが、あまり知られていないですよね。理学療法士と一緒に病院や施設でクライアントのリハビリテーションをサポートする仕事です。
理学療法は筋肉や関節を動かしやすくする仕事に対して、作業療法は生活動作や生活習慣、生活環境を改善するお仕事です。なので、専門職というわけではないのですが自動車運転再開したいというご依頼があれば、もちろん実現に向けてサポートさせていただいています。
ここでいう『作業』というのは「人間が生活するうえで行う生活動作」なので、自動車運転も含んでいるんですね。
作業療法士が運転支援で行うこと
1.認知機能の評価
自動車運転って実はかなり高度な脳の機能を複雑的に扱っているんです。みなさんも運転し始めってやたら脳が疲れた経験ってないですか?慣れてくるとこの辺はあまり意識的に行わなくなるのですが、加齢や怪我、障害によっては脳の機能がうまく扱えないことがあります。
例えば注意機能と呼ばれるもので、運転に集中する時間が短くなったり、同時に二つのことに注意を向ける(信号と歩行者の状況など)ことができなくなったりすることがあります。ほかにも判断力の低下により、急ブレーキが遅れることや危険予測ができないということがありますので、そういった機能に問題がないかを評価します。
2.身体機能の評価
クライアントの中には左半身がマヒしていたり、下半身が全く動かない方もいらっしゃいます。その場合、どの部分が正確にコントロールできるのか?車からの乗り降りはどうか?ブレーキとアクセルを踏めるかどうか?スピードコントロールできるかどうか?片手でハンドルは切れるのかどうか?といった運転に必要な運動機能を評価します。
3.自動車運転評価
これは行える場所に限りがあるのですが、最近はドライブシミュレーターと呼ばれる画面上での運転をしてもらい実際に運転した様子を評価します。また実際に運転をすることもできる病院もあります。
4.希望の把握
自動車運転が出来るようになってから、何がしたいのか?どんな生活が送れたらよいのか?といった希望の確認をします。自動車運転ができることで増える生きがいや役割、趣味を明確にし、その実現に向けたプログラムの立案に役立てます。
5.運転技能向上トレーニング
先ほども述べましたが、自動車運転は脳機能と身体機能を複合的に扱う作業なので、技能獲得も当然難易度が高くなります。そういった運転技能が獲得できるようトレーニングを行います。
6.環境支援
身体機能、認知機能や運転技術によっては自動車を改造する必要があったりもします。自動車の中の環境支援はもちろん、運転ルートや時間帯、運転範囲などのアドバイスもします。また、家族にも協力して頂く場面もあるので、どのように支援したらよいのかの指導も行います。
7.代替手段の提案
リハビリテーションを受けたからといっても必ずしも運転が再開できるとは限りません。そのような場合にはどうしたら生活がよりよくなるのか?自動車運転を通じて叶えたかったことをどう実現するのかをサポートします。
8.関係機関との連携
自動車運転は許可は病院ではなく警察庁が行いますので、教習所や運転免許センターなどと協力をしながら支援させていただきます。
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